日々と文学

読書ブログ、映画ブログ

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休日はいま転職活動をしていて、気になる会社をまず現地に見に行くということをしている。出版関係の業種になるので文京区とか、あまり行ったことのない土地に地下鉄などで行って二箇所くらい見て、帰ってくる。
今日は新大久保にある会社にまず行った。渋谷から副都心線新宿三丁目に行き、伊勢丹を覗く。ワイシャツを見るが気になるのはなく、紀伊國屋書店へ。二階の文芸書のコーナーの日本の全集の書棚に、小島信夫の全集を見ようと思ったがもう置いてなかった。全集というか「集成」という名で、たぶん10年前くらいから水声社により「批評集成」「短編集成」「長編集成」と順番に刊行され小島信夫の著作が編まれた。一冊一万円くらいしたが私も少し買った。
そこで、ハライチというお笑いコンビの岩井さんの本が渦状に、円を描いてたくさん平積みされていて、気になった。前作『僕の人生には事件が起きない』は10万部売れたそうだ。二作目は『どうやら僕の日常生活はまちがっている』というタイトルで、まえがきを読んだら気になった。すごく自然な人なのだな、と。
そこから以前の職場のあった花園神社の方を歩き、東新宿駅まで来て、さらに歩いて新大久保へ。歩いている時、並ぶ店や食べ物の匂いなど、タイやインドへ旅行していた時が今なんじゃないか、と一瞬錯覚して、アジアの外国の人が多いし料理も興味あるし、面白いかも知れないと思った。その大通りから路地を入った、急に静かになったところに一つ目の候補の会社があって、エントランスまで入った。
新大久保駅から今度は山手線に乗って駒込へ。はじめて降りた駅だった。小さな駅で特にランドマーク的なものもなく、小ぢんまりした印象。道を渡るととても良さげなメガネ屋があり、帰りに覗こうと思った。その先、7分くらい歩いて次の会社に。一階にとてもいい感じのカフェがあるビルだった。エントランスの先に会社の入口が見え、ガラス戸から出版社らしく本の並んだ明るい社内が見えた。
引き返してメガネ屋を見ようとしたら、営業みたいな人たちが挨拶を繰り返しながらメガネ屋に入っていったので、やめた。この先の会社と縁があればまた見れる。
すごく疲れていて、もうそのまま家に帰った。三連休の初日で、よく眠れず疲れがどっと出て、駅で買った今川焼を部屋で食べると睡魔が。まだ三時くらいだったと思うが、泥のように重たくなって眠る。時々目を覚ますと窓の外が少しずつ暗くなり、冬布団を干したままだったことがずっと眠りながら気になった。隣家に住む大家さんが気にしてピンポンを押してくるんじゃないか、たしか前にも急に雨が降ってきたさいそんなことがあった。窓の外のベランダで、暗くなっても干されている冬布団がすごく視線にさらされている、そんな恥ずかしさが眠りながらずっとあって、たぶんそれでも寝る、という状況がぐっすり寝入らせてくれるのだ、ヤバいやばいと思いながら、外は暗くなっている、何時なんだろう…と。
宮沢賢治を読んでいた。電車のなかでも顔がくしゃくしゃになるくらいいい。「風の又三郎」のシーンが、子供が山や川で遊ぶシーンが、自分の子供の頃をリアルに思い出させ、また山や川の自然のなかに入っているような、ただそれだけでも心地よい、身体が森のなかにあるような状態になる、小説ってすごい。飲み込まれていく。ワンセンテンスでグッと引き入れる。方言や地の文もかなりまともな文章になってない。
Wikipedia宮沢賢治を調べていたら、昔からすごく好きだったのに、全然違う賢治像が得られてきた。やっぱり相当苛烈な、めちゃめちゃな人生じゃないか。というか、「ハードコア」と感じた。灰野敬二さんが言う言葉だが、普通の社会には落ち着かないわけだ、こんなハードコアな人は。そして病気があったから、上京したり帰郷したり、今はこういう人はいない。今はたとえばカリスマ的な神話もない、それは誰もが文章でも音楽でも世界中に発信でき、また、誰しものプライベートな日常が価値あるものとして流布、奔流しているから、隠されたものなどないかのような錯覚が出来上がっているから。昨日だったか、柿内正午さんがブログで、「社会も他の人工物と同じくひとつの構築物として捉えること」と書いてあり覚えておきたい言葉だと思ったから書いておく。
これを昨日の会社帰りの電車の中で読んでいた。明日から三連休だという、その瞬間は後から思い出すと、なんかすごく貴重に思える。一日目がまもなく終わる。明日は友人とヨスカに行ってそれからどっか遊びに行く。その前に散髪とパーマ。
「日本蒙昧前史 第二部」が連載開始された、磯崎憲一郎さんの前作『日本蒙昧前史』を紐解くと、こうあった。
「もちろんこの頃既に、人々は同質性と浅ましさに蝕まれつつはあったが、後の時代ほど絶望的に愚かではなかった、解けない謎は謎のままに蓋をするだけの分別が、まだかろうじて残っていた」
全てが言葉で理解できるという、不毛な考え方は下らないよなぁ。語ることより、黙ることだ!

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写真は次の日行った江ノ島