日々と文学

読書ブログ、映画ブログ

151 『やさしい女』ブレッソン

この日は、朝から集中力もなく、そう、昨夜から唇が炎症していてよく眠れなかった。皮膚科でもらった保護する軟膏を塗るが、ヒリヒリと皮がなくなったズルムケ状態で、何度か起きて塗ったが改善しなかった。ステロイドの入った軟膏もあるのだが、これを塗る…

150 イスラエル博物館所蔵展

大手町へ。東京駅まで歩き、先輩と合流。三菱一号館美術館でイスラエル博物館所蔵展があり、そこまで歩く。ステキな通りで、ウェディングドレスの女性とタキシードの男性が、カメラマンに写真撮影されていた。とても楽しそう。街はすこしずつ、クリスマス装…

149 ささやかさと真実

私が高校生のころ、と言っても三年の夏まではほとんど野球部のみでいっぱいだったから、引退したそれ以降だと思うが、急激に芸術に引き寄せられていく。今でも仕事の時は嵌めているセイコーの腕時計を、野球部引退祝いみたいなかたちで父親にその時買っても…

148 タリーズでアウグスティヌス

モツ鍋を食べさせてやると親父の招待があり、実家へ。その電車の中で、アウグスティヌス『告白』を。「それゆえ、現在はただ過去に移りゆくことによってのみ時間であるなら、わたしたちはどうしてそれの存在する原因がそれの存在しないことにあるものを存在…

147 沼田真佑「廃屋の眺め」

新宿から帰るとき、新宿三丁目から副都心線に乗ろうとすると、ホームにすごい人だかりができていて、アナウンスでダイヤが大きく乱れているとのこと。東急線で発生した車両点検が影響らしい。夕方で、帰宅ラッシュの時間帯に差し掛かっていた。渋谷まで行け…

146 スウィート・シング

一人の生、ひとつひとつの命は海面に落ちる雨粒である。これを昨日、保坂さんが何度か繰り返し言っていて、それも、これ以上説明せよと言われてもできないばかりが、だからどうだと自分でもそういうのはない、と言った。ただそのイメージだけがあって、なら…

144 【配信版】小説的思考塾vol.5

野間文芸新人賞になった井戸川射子『ここはとても速い川』を読んでいる。以前は巣鴨だったかの会場でやっていて私も行ったことのある、保坂和志さんの「小説的思考塾」というトークイベントの配信版をこの度久方ぶりに視聴した。ライヴで、休日だった土曜の1…

143

『偶然と想像』が12月に公開されるよう。『ドライブ・マイ・カー』も3回見たけどもう一度見たい。自宅ではゴッホの画集を眺めている。昨日、渋谷の焼肉屋さんで和牛食べ放題に行ったが、そこに荷物を忘れてきて、今日電話してみた。エコバッグを手提げカバ…

日常と不在を見つめて

朝起きたら11時だった、職場から二時間前に来てたLINEを返すと、そのまま既読になり、即電話がきた。申し訳ない。アピチャッポンの新作『memoria』が来年の3月4日公開されるとのこと。その数十分前のニュースを見ると、北米では配信・ソフト化の予定がなく、…

141

ナサニエル・ホーソーンの『緋文字』を買いに、大きな蔦屋書店に行ったがなかった。姉の文が載った宮本浩次特集の別冊カドカワを見て、帰ってきた。自宅駅のツタヤで、『倫敦から来た男』をレンタル。「体系よりも、一つ一つの発見である。その発見の中にお…

140

連休の最後の日にいつもの三軒茶屋のTSUTAYAで『海抜』という日本映画が目に止まった。手に取ったら、キャストも監督も知らない人たちで作っていて、これは大学生たちが大学の卒業制作で作ったものだった。それがミニシアターでかかっている、ならともかくDV…

139

休日はいま転職活動をしていて、気になる会社をまず現地に見に行くということをしている。出版関係の業種になるので文京区とか、あまり行ったことのない土地に地下鉄などで行って二箇所くらい見て、帰ってくる。今日は新大久保にある会社にまず行った。渋谷…

『ドライブ・マイ・カー』

十五夜に『エンドレス・サマー』を聴いている。正確には十五夜は明日だ。ふとヨスカで開いた雑誌に石橋英子のオススメディスクが並べられていてそこによく見知った、親しみのあるクリスチャン・フェネス『エンドレス・サマー』の海に夕陽が沈むところのジャ…

137

涼しい日が続いた。スーツの上着を着ていく日があった。九月に入ったばかりだ。夜は虫が鳴いていて、会社帰りの夜風が秋らしい。夏の終わり。タイミングを逃していた、友達の店へ仕事帰りに行った。小雨が降っていた。窓の前の席に座る。店主である高校の友…

136. プルーストと「うた」

文學界10月号がプルースト『失われた時を求めて』の特集をやっている。「プルーストを読む日々」なるタイトルで、「史上もっともハードルが低いプルースト特集が始まります!」とのこと。とはいえ、文學界だ。『失われた時を求めて』を通読した事のない14人…

135 信仰とアウグスティヌス

比喩とはなんだろう、ニーチェの『ツァラトゥストラ』から以前引用したところについて、思う。実は仏典にも、たとえばサイの角のように孤独に歩め、みたいなサイの角の比喩など、よく出てくるものが多数ある。目の前のものを、ここでない別のものと重ね合わ…

134

たぶん次は「抵抗」、このことについて考えてゆくだろう。新聞を読んでいるとアジアや中東、アフリカや南米の不安定な国政や過激なデモの記事につい目がいく。『バンコクナイツ』を制作した空族がこのタイでの映画制作を通して、抵抗について言っていた。タ…

133

文學界9月号に載っている神学者の対談でアリストテレスの『ニコマコス倫理学』という著作からの引用があった。 「「人ならば人のことを、死すべきものなれば死すべきもののことを知慮するがよい」という勧告に従うべきでなく、できるだけ不死にあやかり、…

132

「イエスにとって洗礼とは、自分に死んで立ち上がることでした。すなわち過越(すぎこし)こそ本当の意味での洗礼だということです」たまたま家の片付けをしていて、たぶん10年くらい前に自分が書いた散文がどかっと出てきた。これが意外にも伝えてくれると…

131『memoria』

たしか作家の山下澄人が日記かなにかの文章で、夏のある日、誰か知人の子供と遊んだとかゲームしたとかのんびりすごした日のことを「夏休みみたいな日だった」と書いていた。それを思い出した。部屋があまりに散らかっていたので、久しぶりに片付けた。部屋…

130

プルーストは本当に、いい小説・おもしろい小説には「こんなにすごい文章はない!」という箇所が一冊のなかに3、4箇所でてくるが、『失われた時を求めて』では、そんな文章がひたすら続いていく。それも岩波文庫で14巻の大長篇でだ! 恋のことをずっと書いて…

129

毎朝セブンイレブンまで行って新聞を買ってきて、シャワーを浴びる。夜は眠れず、朝までよく眠れず、またぼんやりした頭でセブンイレブンに行く。そして会社へ。 新聞というものを読んでいると気がつくのは、自分の関心の分野について。やはりアジアの記事に…

128

仕事の休憩に書店に入り、『オーバーヒート』を購入。今、芥川賞の候補になってる千葉雅也の小説で、明日が発売日だった。ついさっき、保坂和志のツイッターを見てたら、現代文学は読む必要ない、と言っていて、こんな乱暴な言い方はしない人だと思った。 千…

127 『未練の幽霊と怪物』チェルフィッチュ in 兵庫

職域接種でワクチンを打った。大手町で打ち、そのまま東京駅に歩いて、新幹線にライドオン。京都に行き、京大病院近くのジャズ喫茶に。ドアを開けると、そこにバーボンを飲んでいる友人が座っていた。久しぶりの再会で、沈黙に照れが生じるので、僕も珍しく…

126

次の休み、朝起きて、パンを買いに出たのか、覚えてないが、いや、コンタクトレンズをもらいに行ったのだった。処方箋が切れていて、眼科にも行って、その帰り、路地の角に小さな花屋があり、そのさりげない店構えが洒落ていて今まで利用したことはなかった…

125

千葉雅也『デッドライン』のこの生活はなんだ? 大学に行って、世田谷の家賃12万の部屋に一人暮らしして、朝起きるとまずドトールに行ってジャーマンドックを食べてから勉強して、午後に大学に行って、ドゥルーズだのフランスの現代思想、哲学を学び、映画研…

124

千葉雅也『勉強の哲学』を読んだ。著者の風貌になにか感じて、『動きすぎてはいけない』が書店に並んでいた頃から、今まで覚えていた。8年前らしい。しかも私は『はたらきすぎてはいけない』とタイトルを誤読してて、何だそれ?と思って嫌っていた。著作も…

123

折坂悠太のライブに来ている、とその会場の写真を送ってくれた友人が、『想像』という、チェルフィッチュの舞台公演「三月の5日間」の制作過程を捉えたドキュメント映画が始まっている、と教えてくれた。ぼくはその舞台公演を四年前に神奈川芸術劇場で観てい…

122

好きな人を憎んでしまうのは悲しいことだ。知ってることが多い分、それは弱みにもなる。 なぜ知っていることは、軽んじられるか。高を括るというのは大人になればなるほど陥る。目の前の出来事より過去の経験を信じる、それでも目の前の出来事を見ることはい…

121 アルベルチーヌ

「プルーストの恋愛は「相手の容貌や人格」をなんら対象としていない。恋心とは、手に入らないものを求める妄想にも等しいあがきなのだ」と『失われた時を求めて』9巻の「訳者あとがき」で吉川一義氏は断言する。「プルーストの「私」はアンチ・ヒーローであ…